質屋アプリCASHとは何なのか?古物商と質屋の関係

(2017年12月14日 ※一部加筆しました)
「目の前のアイテムが一瞬でキャッシュ(現金)に変わる」
CASHは、これまでに無かったサービスとして一瞬でネットを騒がせ、現在「メルカリ」も参入するなど、マイクロレンディング市場は、新たなマーケットとして注目されています。

CASH公式サイトより引用)

CASHとは何なのか?

このサービスを一言でいえば、「目の前のアイテムが一瞬でキャッシュ(現金)に変わる」ということだろうと思います。
例えば、ブランドものの服やバッグなどを担保にすると、一定の条件を満たせば換金することができます。
換金の対象となっている物品について、ジャンルや状態を選んでその写真を撮って送ると、すぐに査定され、1000円~2万円の範囲で受け取れる仕組みとなっています。具体的には査定された額の下に「キャッシュにする」というボタンがあるのでそれをタップするだけでその金額が受け取れるのです。
しかも、ブランド品だけでなくスマートフォンやヘアゴムなど幅広いアイテムが対象となっていますので、ほぼ即時にキャッシュを得ることができます。
利用者は担保に入れた物品を2カ月以内に運営元へ送るか、15%の手数料を上乗せして返金するかのどちらかを選ぶのですが、この換金性が質屋アプリと呼ばれる理由です。

そもそも質屋ってなに?

では許認可の専門家である行政書士の視点から、このアプリについて見ていきたいと思います。
そもそも質屋という言葉は聞いたことがある方は多いと思いますが、「質屋営業」とは、質屋営業法によれば、「物品を質に取り、流質期限までに当該質物で担保される債権の弁済を受けないときは、当該質物をもつてその弁済に充てる約款を附して、金銭を貸し付ける営業」のことを言います。
つまり、物品を質屋に渡してお金を借り、返金したら物品を返してもらい、返金しなければそのままその物品は戻ってこなくなるということです。
ちなみに質屋に借りた金の返済をしないまま期限が切れて、質物の所有権が質屋に移ることを「質流れ」と言います。

質屋営業の現状

質屋営業自体に目を向けると、警視庁が発表している統計によれば、許可を持っている事業者はこの10年間、減少し続けています。

警視庁HPより引用)
減少していることの理由としては、大手の質屋への統廃合があげられますが、もう一つの理由として、質屋が持つ機能が代替されているということがあげられるとおもぃます。
つまり、Yahoo!オークションやメルカリなどの台頭によって、不用品などをリサイクルにして金銭を得るということが簡単になったことが最大の要因だと考えられます。

CASHは質屋なのか古物営業なのか

ではCASHの運営元である株式会社バンクは、古物営業法の許可は持っていますが、質屋営業の許可は持っていません。
古物営業とは、一度使用された物品、新品でも使用のために取引された物品、又はこれらのものに幾分の手入れをした物品を「古物」といいますが、古物の「売買」、「交換」、「委託を受けて売買」、「委託を受けて交換」を行う営業のことを言います。簡単に言えば古着屋さんや中古自動車やさんなどを言います。
質屋アプリと呼ばれ、上記のように物品と引き換えに換金できるシステムですがどういった論理構成なのでしょうか?
もう一度CASHのサービスを見ると、買い取られた商品は2カ月以内にCASHに送るか、返金するかを選べます。
返金する場合は撮影した商品を送る必要はありませんが、一律15%の手数料がかかります。
この点において、15%の手数料は本来古物流通で得られるはずだった買取による機会損失を補填するためのキャンセル料として考えているのだそうです。
転売目的で買い取ることは古物営業ですし、そもそも物品を質に入れてお金を貸しているのではなく、即時査定してお金を支払っている(買い取っている)のであり、質屋営業には当たらないということです。
また、民法345条は「質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない」と定めています。
つまり、単に撮影をしただけで、物品を送っていない状態では質として成立していないと考えることができます。
つまりCASHは質屋アプリでなく、質屋っぽいアプリということになります。

CASHは貸金業なのか

もしCASHがお金を貸し付けているとすれば、貸金業の許可を取っていない以上は「貸金業法」違反の可能性があり、さらに「利息」をとっているということになれば、「出資法」違反が問題になります。
この点において、民法は第587条で「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる」と規定しています。
CASHは返還することを約束しておらず、あくまでも物品を買い取っており、送付されてこない場合のキャンセル料として15%の手数料がかかるとしています。そもそも支払い時には物品の移動がありませんので、変換するものすらないことになりますので、法的には消費貸借に当たらず、それについての貸付でない以上は貸金業にも当たらないと考えられます。
ちなみに「貸金業」は「出資法」により、上限金利は貸付額に応じて年 15%~20%のところ、質屋営業では上限金利はなんと年109.5%となっていますが、あくまで返金手数料とはいえ2ヶ月で15%というのは非常にうまくできている仕組みと言えそうです。

まとめ

 
いろいろな意見があるようですが、個人的にはこうしたマイクロレンディング市場というのは興味深いです。
実際に、メルカリなども参入し、今後ますます活性化していくでしょう。
専門家として、CASHの今後を注視していきたいと思います。