最近弊社へも民泊関連のお問い合わせが増えてきています。
民泊関連のニュースは数年前からTOPニュースでもチラホラ見受けられましたが、最近はなぜかニュースのTOPに上がることは少なくなりました。
しかし2017年に改正された旅館業法が2018年の6月15日に施行されることもあり、実は民泊業界はにわかに沸き立っています。
民泊関連のニュースを追いきれていない方でも5分で追いついてもらえるよう、民泊問題がどう始まって、今どうなっているのを全体像を簡単にまとめてみようと思います。
そもそも民泊が問題になった訳
「Airbnb」(エアービアンドビー)の台頭により、4年程前から住宅を宿泊・施設として貸し出すいわゆる「民泊」が主に不動産投資家の間で流行し始めました。
Airbnbとは
宿泊施設・民宿を貸し出す人向けのウェブサイトである。世界192カ国の33,000の都市で80万以上の宿を提供している。2008年8月に設立された、 サンフランシスコに本社を置く、非公開会社Airbnb, Inc.により所有、運営されている。
Airbnb – Wikipedia
当時、「爆買い」というワードの流行に代表される外国人旅行者が増加し始めた時期でした。
都市部の宿泊施設は供給が追いつかず、通常3000円のホテルが、週末になると2万円と、とんでもない値段に跳ね上がっていました。
そこで、ホテルではなく自宅や賃貸しているアパート・マンションをホテルよりも格安で旅行者に貸し出すことで、利益を得ようというビジネスが流行した訳です。
実際に当時から民泊を運営していた方は月にして数百万の利益が出ていたということも聞きます。
一方で住民と宿泊者におけるトラブルが後を絶たず、社会問題に発展します。
旅館業法に抵触
さて、この民泊の儲け話には裏がありました。
厚生労働省によると、「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」は、旅館業に当たるため、民泊を営業するには旅館業の許可が必要だったのです。
旅館業法の高いハードル
では旅館業の許可を取ればいいのでは?
実はこの許可はそう簡単なお話ではありませんでした。
主に以下のようなハードルがありました。
・トイレの数を増やす必要があったり構造的なリフォームが必要
・ほとんどの自治体で玄関フロントが必要
・建物の他の住民と建物の出入口や通路を分ける
・フロントに宿泊者がいる時間は管理人常駐
これを見ただけでもハードルの高さが伺えるのではないかと思います。
つまり、Airbnb登録の民泊物件のほとんどが「違法民泊」物件だったのです。
3つの民泊関連法令の改正及び策定
2016年、政府は当時2,000万人の外国人旅行者を、2020年までに倍の4,000万人にまで増やすと政策を発表。
倍増すれば宿泊先が足りなくなるのは火を見るより明らかでした。
「空家増加問題」「シェアリングエコノミー」という言葉が急浮上し始め、観光業界を中心に空家などの遊休資産を活用すべきだとの意見が広まります。
それには旅館業はあまりにも要件が厳しすぎる、というのが主張でした。
一方で、ホテル旅館の増築を進めているホテル旅館業界も黙っていません。
既得権益を守りたいホテル業界と、改革を起こしたい観光業界の天下分け目の合戦が幕を明けます。
そこに政府の思惑も加わり三つ巴の様相を呈します。
そして幾度に渡る検討会や法令改正案を経て、3つの法令の改正及び策定が立て続けに起こったのです。
2,住宅宿泊事業法(通称「民泊新法」)の策定
3,旅館業法の改正
以下簡単に各法令の内容をまとめます。
国家戦略特区域施行令の改正
政府が定める国家戦略特区において、一定の条件のもと、民泊を旅館業の適応から外し、国家戦略特区域施行令を適応しようというものです。
都内では現在大田区でのみ始っています。
国家戦略特区域施行令におけるトピックスは以下です。
・3日~10日までの宿泊が必要
・床面積が25㎡以上(旅館業改正前は33㎡が必要でした)
フロントが無くても良いということでマンションでの民泊も想定されましたが、3日(2泊)以上は泊めなくてはいけないという条件がネックになりました。
現状、民泊利用者のほとんどが1泊の宿泊だったからです。
政府の思惑では大田区でモデルケースとして様子を見て、他の区へも広げていこうとしていましたが、宿泊日数の制限が影響してか、1年を経過しても大田区以外ではまだ実施されていません。
住宅宿泊事業法(通称「民泊新法」)の策定
そして、2017年「住宅宿泊事業法」新たな法律が成立しました。
実際の運用は2018年の6月からです。
違法民泊を無くすというのがこの法律の政府の目的だと思われます。
この法律では条件を満たせば旅館業の適応無く、届け出をするだけで営業して良いと定められました。
一方で2018年の6月15日に届け出を出していないAirbnb掲載の物件は削除するように政府から通達が出ています。
これによって、違法民泊は相当数減ることが予想されています。
以下が今わかっている範囲での主な法律の内容です。
・住宅専用地域でも営業が可能に
旅館業法の改正
2の住宅宿泊事業法制定により、180日以上営業をする場合には、旅館業の営業許可の取得が必須となりました。(条例による日数の調整が入る可能性があります)
そこで、既存の厳しかった旅館業にも緩和の改正が入りました。
同じく2018年6月の施行です。
以下主な改正点です。
・部屋の数によるホテル・旅館というくくりがなくなる(※)
・フロントの設置が原則として不要に(2018年2月現在審議中)
・トイレの数の条件撤廃
(※)一部屋でもホテル・旅館となる。これまでは5部屋以下の場合は「簡易宿所」という扱いになり、原則として部屋のカギは掛けられませんでしたので、その点が緩和されます。
法改正と条例の歪み
これだけ見ると法令が改正され、民泊がやりやすくなるんだね、めでたしめでたし、なのですが、法令が改正されたからといって、全ての問題が解決する訳ではありません。
特に地域住民の理解を始めとした騒音、犯罪、テロ、火事など考え得るネガティブな問題は、法令ではなく運営レベルで担保されるべきものです。
国レベルではより拡大傾向で積極的な議論が行われてきたのに対して、区や市の自治体では逆に地域住民や現場の問題について議論がされてきました。
今回の旅館業改正についても、法律ではフロント設置義務は原則撤廃されますが、条例で別途必要、と定めることが可能とされており、一部自治体ではフロント設置を義務化するところもあるようです。
まとめ
このように、法改正は2017年のうちに無事完了し、2018年からは実際に運用レベルで適応されることになります。
特に前途の住宅宿泊事業法(通称「民泊新法」)の届け出については2018年3月から受付を開始するとあって、慌ただしくなってきています。
民泊関連の事業者様、空家を活用したい方、少し副収入が欲しい方は、今後目の話せない状況になりますね。
弊社でも旅館業の許可申請・届け出をサポートしています。
以下のフォームよりお気軽にご連絡下さいませ。