ネットオークションに許可が必要?紛失した原画の出品から考えてみた

先日、40年以上前に行方不明になった漫画「愛と誠」(梶原一騎原作・ながやす巧作画)の原画が、インターネットオークションに無断出品され、400万円で落札されたというニュースがありました。
いまやネットオークションはヤフオクやメルカリなどのアプリなどもあり、生活の一部になっている人も多いのではないでしょうか?
このニュースから、ネットオークションの注意点を見ていきたいと思います。

ネットオークションへの出品は許可が必要?

そもそもネットオークションでものを買うだけでなく、自分でも不要なものを出品したり、転売したりという方も増えていると思います。

スマホの普及で簡単に商品の写真も取れるし、ネット決済できるしという一般ユーザーでも非常に簡単にできるのが最大の理由でしょう。
そもそも、中古品を反復継続的に販売するためには、最寄りの管轄警察署を経由して、公安委員会に古物商という許可を取らなくてはなりません。
警察署を経由することからもわかるように、元々は盗品が市場に流通するのを防ぐのが目的です。
販売業者には許可を取るために一定の要件を設け、また、許可取得後も帳簿の保存や本人確認などの義務を課しています。
では、不用品をメルカリやヤフオクで販売するだけで古物商の許可は必要でしょうか?

ネットオークションで許可が必要になる場合とは

いわゆる反復継続して、業として、つまり仕事として行う場合には古物商の許可が必要とされていますが、具体的にはどの程度の取扱があれば許可が必要なのでしょうか?
実は経済産業省のガイドラインでは、ネットオークションで許可が必要になる場合として以下のように定められています。

  • 過去1ヶ月に 200 点以上又は一時点において 100 点以上の商品を新規出品している場合
  • 落札額の合計が過去1ヶ月に 100 万円以上である場合
  • 落札額の合計が過去1年間に 1,000 万円以上である場合。

(引用:特定商取引法の通達の改正について~「インターネット・オークションにおける「販売業者」に係るガイドライン」の策定について~

ネットオークションを運営するためには?

一方で、ネットオークションを運営するためには3号営業、つまり、古物競りあっせん業の届出が必要になります。
ちなみに、実際の古物市場を運営するためには2号営業である古物市場主の届出が必要になります。
今回紛失していた「愛と誠」の原画の一部は、今年4月20日に漫画古書店大手「まんだらけ」が運営するネットオークションに出品されていましたが、「まんだらけ」としてはこの古物競りあっせん業の届出をしているほか、自分たちも中古品の販売をしているので古物商の許可もとっているわけです。

ネットオークションに盗品が出回ってしまったら

今回はすでにこの原画が400万円という高値で取引がされてしまったようですが、古物競りあっせん業者として盗品がネットオークションで扱わられないように、古物営業法では下記のような定めがあります。

(相手方の確認)
第21条の2 古物競りあつせん業者は、古物の売却をしようとする者からのあつせんの申込みを受けようとするときは、その相手方の真偽を確認するための措置をとるよう努めなければならない。
(申告)
第21条の3 古物競りあつせん業者は、あつせんの相手方が売却しようとする古物について、盗品等の疑いがあると認めるときは、直ちに、警察官にその旨を申告しなければならない。
(競りの中止)
第21条の7 古物競りあつせん業者のあつせんの相手方が売却しようとする古物について、盗品等であると疑うに足りる相当な理由がある場合においては、警察本部長等は、当該古物競りあつせん業者に対し、当該古物に係る競りを中止することを命ずることができる。
 このように、ネットオークションの主催側にも盗品か疑わしい際には一定の義務は課されていますが、「疑うに足りる相当な理由」という解釈によってはなかなか実効性が確保されないのではないかと思います。
もちろん、今回のニュースをうけて今後は市場に他の原画が出てきた際は、「疑うに足りる相当な理由あり」と認定されやすくはなるでしょう。

買ってしまったものが盗品だったら?

では、もし自分がネットで買ったものが盗品だったらどうなるでしょうか?
民法では下記のような規定があります。
民法192条(即時取得)
 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
 つまり、盗難品であることを知らなくて、また、注意をしても盗難品だと分からず購入した場合には、原則として元の持ち主に返す義務はありません 。
逆に盗品だと知っていて買ってしまった場合や、注意すれば盗品だとわかった場合には無償で盗難品を返すか、既に転売したりして返還できない場合には、賠償しなければならないのです。
本事件について、ながやすさんと版元の講談社及び少年マガジン編集部は「もしネットや店頭にあれば、紛失原画なので購入せず、編集部(03・5395・3460)に連絡してほしい」と呼びかけていますが、こうした場合には注意すれば盗品だとわかったとされて返還義務が発生するかもしれません。
どちらにせよリサイクル市場でも盗品かもしれないという場合には市場を提供する側も、購入する側も注意が必要ですね。