忘年会って残業代出ますか?

年末が近づき、なんだか慌ただしい気持ちになっている人も少なくないのではないでしょうか。
年末と言えば忘年会。
そろそろ忘年会の予定が入り始めるころでしょう。
取引先や友人・知人との忘年会に加えて、会社行事としての忘年会もあります。
ただ最近では、若手社員から「忘年会に参加したら残業代でますか?」といった質問が出ることもあるようです。

忘年会でトラブルに?!

「残業代なんて出るわけがないだろ!」
「忘年会は、他部署との懇親を深める意味合いもあるんだから出るのが基本!」
「新入社員は出し物も考えておくように!」

なんていう昔ながらの考え方は非常に危険です。
こんなことを言ってしまうとすぐに「パワハラ」「未払い残業代」のトラブルに発展してしまう恐れがあります。
そのようなトラブルを起こさないためにも管理職を中心に基本的な考え方は共有しておくことが望ましいと言えます。

そもそも労働時間とは?

残業代が発生するということは、労働時間に当たるということになりますのでまずは、労働時間の考え方について確認しましょう。

労働時間とは「原則として使用者の指揮命令下に置かれたもの」とされており、これは労働時間について判断をした<三菱重工業長崎造船所事件>の中で述べられています。

「使用者の指揮命令下に置かれている」とはどういうこと?

「使用者の指揮命令下に置かれている」とは、一律に判断することは難しいですが次のいずれにも当てはまれば、使用者の指揮命令下に置かれているとされる可能性が高まります。

□事業主が場所を指定して、その場にいることを要求している

□事業主が時間を指定して、その場にいることを要求している

□その要求に応えないことによる不利益がある

明確な要求をしていなくても「基本的にはみんな参加しているから」等、実質的に参加を強制するような言動があると事業主からの要求があったとみなされる可能性があります。

忘年会が労働時間に当たるか?

忘年会が労働時間に当たるか、そして残業代の支払い義務が発生するかについては、個別に判断していく必要があります。

具体的には、次のことに当てはまると労働時間に当たると判断される可能性が高まります。

□忘年会への参加が強制されている(実質的なものも含む)

□忘年会の費用が会社の福利厚生費から支払われている

□忘年会へ参加しないことについてペナルティがある

会社行事としての飲み会等と同様に取引先との接待等についても同様に判断することになると考えられます。

裁判事例紹介

忘年会等の飲み会が労働時間に当たるかどうかは、過去の労働時間に関連する裁判事例を参考にして行くと良いでしょう。

○三菱重工業長崎造船所事件

労働者の作業服及び保護具等の装着・準備体操場までの移動等が労働時間に当たると判断された事例。

○行橋労働基準監督署長事件

中国人研修生との親睦を深めることを目的として、有志によって開催された私的な歓送迎会だったが会社から「歓送迎会に参加してほしい」旨の強い意向を示されたことで業務と認定された事例。

○大星ビル管理事件

24時間勤務における仮眠時間が外出を禁じられ、仮眠室における在室、電話の接受、警報への必要な措置が義務付けられていること等から労働時間に当たると判断された事例。

労働時間に当たると判断されれば賃金の支払いが必要になるので、独自の判断をせず専門家ともよく相談をすることを強くお勧めします。

まとめ

「忘年会に参加したら残業代でますか?」

このような質問が出るのは、社員が「プライベートを大切にしたい」と思っている一方で「参加したくない」という気持ちの裏返しでもあります。

このような声が出ないよう、日ごろからのコミュニケーション向上を図ったり、信頼関係の構築を心掛けたりすることも大切なのかもしれません。