IT業界の契約書に激震!民法改正が及ぼす影響とは

去年の五月、120年ぶりに改正された法律があります。

それが民法。個人や企業との契約関係や、相続・離婚といった人々の暮らしに関する基本的なルールが書かれた法律です。

今回の改正では、特に債権法の部分、つまり契約に関する部分の改正が多かったのでIT業界、特にシステム開発の契約に影響を与えています。

契約に関する民法改正の概要

2017年5月26日に、民法(債権法)の改正法案が成立し、2020年4月1日に施行されることになりました。なんと改正された項目は約200項目にもなっています。

IT業界を含め契約書は民法を前提に作成されています。

だからこそ今後は現在使用している契約書について、今回の改正でどのように変わるのかを確認し、適切に見直すことが必要不可欠なのです。

IT業界が注意すべき契約に関する改正とは

200項目以上も改正があったわけですが、IT業界として特に注意すべき改正点についてまとめてみました。

請負契約と準委任契約

IT業界においてシステム開発やアプリ開発などで使われる契約が請負契約と準委任契約です。

請負契約とは、クライアントの指揮命令を受けずに、ベンダー側の裁量で仕事を行い、システムやアプリなどの成果物を完成させる義務を負う契約をいいます。

一方で準委任契約とはクライアントが、一定の行為をすることを受託者、つまりベンダーに委託する契約のことをいいます。

準委任契約では、ベンダーは、クライアントの指示に従う必要はなく、ベンダーの裁量で、仕事を遂行することができる点が請負との違いになります。

また、請負契約の準委任契約との比較でポイントとなるのは、仕事を完成させることが義務付けられているかどうかという点です。

これを踏まえて改正のポイントを見ていきます。

①「瑕疵」から「契約不適合」へ

「瑕疵」とは、依頼したシステムやアプリなどの制作物に何らかのミスがある場合のことをいいます。

そして、納品されたシステム等に何らかのミスがあった際に「瑕疵担保責任」があるとされ、ベンダーに対して契約を解除したり、損害賠償請求ができます。

今回の改正では、この瑕疵担保責任の「瑕疵」という言葉を削除し、=「契約不適合つまり、目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないという言葉に変更になりました。

②新たに代金減額が可能に

瑕疵担保責任があるとされた場合には、これまで①修補請求、②解除、③損害賠償請求ができましたが、今回の改正で代金の減額請求も可能になりました。

例えば、依頼したシステムに対し、ベンダーが納品したシステムに何らかの不具合があった場合にで、「契約不適合」(=瑕疵)が認められた場合は、これまで通り、修補請求、契約の解除、損害賠償請求の他に、その内容や程度に応じて、ベンダーに支払う代金を減額するよう請求できる事になったのです。

修補請求に制限

上記②にある、修補請求についても改正がありました。

改正は瑕疵が重要な場合には、過分な費用がかかる場合でも、修補請求ができたのですが、改正によって瑕疵が重要かどうかによらず、過分な費用がかかる場合には、修補請求ができないようになりました。

これは重大な瑕疵であれば過分に費用がかかっても修補請求できてしまうことが、ベンダー側にとって厳しすぎるのではないかという点が考慮されたのではないかと思います。この改正によって重大な瑕疵かどうかよりも、過分に費用がかかるかどうかによって修補請求ができるかどうかが決まることになりました。

④責任追及の期間が変更

納品したシステムなどに不具合があった場合は、①修補請求、②解除、③損害賠償請求、④代金減額請求ができるわけですが、これらの権利を講師する期間には制限があります。

改正前はシステムが「引渡された時」(システム等の納品がいらないケースでは、「 仕事完成時」)から1年以内とされていましたが、改正によって、不具合を「知った時」から1年以内という形に変わり、責任追及ができる期間が延びました。

システムの不具合にすぐに気がつく場合ばかりではないため、引き渡しから1年では依頼者に酷ですので、「知ったとき」に改正されたのです。

逆に、ベンダー側からみると、「知った」「知らない」という曖昧な基準で、責任追及されるリスクを抱えるのは酷ですので、「知った時から1年以内」というだけでなく、「引渡しから最大5年以内」に責任追及しない限り、たとえ「知ってから1年以内」であっても、請求できなくなるという制限がをつけました。

つまり依頼者側から見ると、システムが納品されてから5年以内であれば、不具合を知った時から1年間は、無償で、修正や損害賠償請求ができることになりなりますが、不具合を知ったときから1年以内であっても、システムが納品されたときから5年が経過しているケースでは、瑕疵担保責任の追及はできないことになります。

⑤未完成でも報酬を請求できることがある

請負契約では、成果物を完成させる義務を負う契約ですので、システムを完成してはじめて、ベンダ-は報酬を請求できます。

しかし、改正によって、ベンダ-が作成したシステムが未完成でも、それがクライアントにとって価値がある場合には、作成した割合に応じて報酬が請求できることになりました。

まとめ

ここでは特にIT業界において注意すべきポイントを取り上げましたが、120年ぶりの民法改正は契約書全体にとっても大きなインパクトになります。

特に今後は一層電子契約書が広まっていくでしょうが、改正のポイントや電子契約書のカスタマイズなどで専門家が関わることも増えるのではないかと思います。

契約書についてご相談事がありましたらお気軽に下記のフォームからお問い合わせ下さい。

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投稿者プロフィール

石下 貴大
石下 貴大代表
1978年10月15日栃木県生まれ 

産業廃棄物やリサイクルなどの環境ビジネス支援や株式会社や一般社団法人などの起業支援に専門特化して10年目。
これまで6冊の出版に加え、日経新聞やフジテレビの情報番組などメディア露出も多数。

1児の父親でメロメロ中。趣味はサッカーとビール。
いつか息子とボールを蹴れることを夢見ています。