起業と代表者保証?生活を守りながら起業にチャレンジする方法

東洋経済オンラインでこのような記事を見ました。

この記事は、欧米諸国に比して日本の起業が立ち遅れている理由について、「これは文化というよりリスクの問題だ」という観点で書かれています。中でも創業融資における「」の問題を指摘しています。

世界中どこでも起業に失敗はつきものだが、失敗の「重大性」が日本ではより大きいのである。たとえば、日本の中小企業のオーナーは、銀行のローンを組むに当たり個人的に保証する旨のサインをし、事業の失敗の責任を個人で背負うことになるが、この負担は個人にはかなり重い。

確かに代表者保証は起業家にとって重いものかもしれません。

代表者保証とは?

会社を設立し、融資を受けると、借入債務はあくまでも会社のものです。
もし事業に失敗し、借入金を返済できなくなった場合、原則的には債務は経営者個人に及びません。
しかし、多くの中小企業において、会社と経営者個人は一体であり、そのため、融資を受けるにあたっては、経営者(代表者)個人に対しても、連帯保証を求められることがあります。
それが「代表者保証」です。

実務的には代表者保証は依然として必要

上記の記事では、次のようにも書かれています。

政府系列の日本政策金庫(JFC)は、中小企業約10万社に対して、ほとんどの場合、担保、保証人、個人保証なしで、平均700万円の融資を行っている。

日本政策金融公庫のデータによれば、平成27年は創業1年未満の会社約26,000社に対して融資を行ったとのこと。2年程前から日本政策金融公庫の新創業融資は原則代表者保証を求めない運用になっていますので、上記の約26,000社については、代表者保証なしで融資を受けたことになります。

しかし、日本政策金融公庫以外の金融機関による創業融資においては、実務的には「無担保無保証」と表記されている融資でも、そのほとんどが「代表者個人の連帯保証あり」です。実際、創業を促進することを目的とした東京都の創業サポート事業においても、無担保無保証と表記されてはいますが、代表者保証はあります。
若干古いデータですが、平成24年度の経産省の調査では、80%以上の企業が融資にあたり代表者の個人保証を提供しています。【経営者保証に関するガイドライン】が出て以来、その割合は現在では改善されているとは思いますが、まだなお代表者個人の連帯保証の問題は依然として残っています。

代表者保証が起業の妨げとなるか?

起業というチャレンジ

起業はチャレンジであることは間違いありません。
チャレンジするからには覚悟は必要です。
ただし、起業してうまくいかなかったとして、生活の全てを失わなければならないのでしょうか?そうだとすれば起業家は増えていきません。

代表者保証と起業促進

たとえ起業家などが、代表者の個人保証を理由に配偶者に反対されるなどして、融資を受けることを躊躇し、結果としてビジネスが軌道に乗るのが遅れ(または乗らず)、というケースは潜在的に多いと感じています。
一方で、ビジネスの進展を考えると「起業したら創業融資は受けておくべき」です。融資を受けないことで、キャッシュの蓄積や出資を待たなければならずビジネスチャンスを逸したり、人や設備に投資できないために成長スピードが遅くなったり、あるべき成長が阻害されるという可能性は十分にあります。
代表者保証がつかないことにより、もっと積極的に創業融資を受ける起業家も増えれば、融資により事業失敗の確率が逆に下がり、事業を継続できる起業家が増え、間接的な起業促進にはつながるという期待はあります。

まとめ

日本政策金融公庫には、代表者保証がつかない融資制度がいくつかあります。

その代表的な融資のひとつして、「中小企業経営力強化資金」があります。認定支援機関の支援を受けることにより、代表者保証なしで融資が受けられるというものです。

新創業融資でも原則代表者保証なしですが、創業から2年以内の起業家しか使えません。
経営力強化強化資金は新創業融資よりもさらにいい条件でありながら、代表者保証がありません。
新創業融資が使えない創業から2年以上経過した起業家にとって経営力強化資金は大変ありがたい融資制度です。

起業はもはや新しい働き方のひとつです。
代表者保証がつかない融資制度を活用するなどして、生活を守りながら起業にチャレンジする方法を模索してみましょう。

投稿者プロフィール

若林 哲平
若林 哲平
融資・補助金を軸としたスタートアップ支援を専門とする行政書士。認定支援機関として、日本政策金融公庫と連携し、多くの起業家の支援を行う。特にNPO法人職員の経歴を活かしたソーシャルビジネスの立ち上げと資金調達には定評がある。