「自己資金」とは?創業融資の最重要ポイント「自己資金」を徹底理解!

創業融資における自己資金とは?

融資において「自己資金」は非常に重要な要素です。
自己資金の条件は、融資制度によっても異なります。

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」

銀行融資において自己資金は大変重要な審査項目です。
創業者が利用する融資で最もメジャーと言っていい日本政策金融公庫の「新創業融資制度」には申込対象者の要件として自己資金の要件が以下のように定められています。

新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方
新創業融資制度|日本政策金融公庫

かつては自己資金は総所要資金の「3分の1以上」を用意しなければならないというハードルがありましたが、現在では「10分の1」に緩和されています。

信用保証協会の制度融資

創業者のもう一つの選択肢である「信用保証協会の制度融資」では大きく「」と「自治体(区や市など)」の2つの制度に分かれます。どちらを利用するかは創業年数や自己資金などのその他自治体ごとに定められた要件によって異なりますが、自己資金要件は以下のようになっています。

東京都 自己資金要件なし
自治体 1/2や1/3(自治体によって要件が異なる)

どこまでが自己資金の範囲?

自己資金の定義は「事業に投資する予定の純然たる自己所有の資金」です。
つまりただ所有しているだけの事業に投資する予定のない資金は自己資金には含まれません。
それでは自己資金とはどこからどこまでの範囲を指しているかを例を上げて具体的に見てみましょう。

消費者金融からの借入れ

これは言わずもがな、自己資金ではありません。
消費者金融とは個人への無担保での金銭の貸付けを中心とする貸金業で、有名なところではアコム・プロミス・アイフルなどが上げられますが、こうした貸金会社から一時的に借りてきたお金は「負債」に当たりますので、当然ながら自己資金と主張した場合は見せ金の扱いになります。

どこから借りてきたかなんて分からないから良いのでは?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、前途したように金融機関が注目しているのは残高ではなく「通帳に溜まってきた経緯」であり「資金の出処」ですので、経緯や出処の説明が必ず求められます。
担当者の納得が行く説明が得られない場合、自己資金としては否認されます。
尚、金融機関は必ず個人のクレジットヒストリーの掲載されている個人信用情報を取得しますので、こうした消費者金融からの借入れも隠すことはできません。

友人・知人・家族からの借入れ

「融資の見せ金を作るために貸してくれないか」と友人・知人・家族から資金を借りたお金は自己資金にはなりません。

友人・知人・家族からの出資

それでは友人・知人・家族から出資のケースではどうでしょう?
出資は自己資金の定義である「事業に投資する予定の純然たる自己所有の資金」には当たらないので自己資金としては認められませんが、出資者がハッキリとしており、契約書などを一筆書いてもらっている等の場合は、自己資金として認められるケースがあります。少なくとも、周囲の方からの協力を受けられているということと金額の担保があることから審査上の加点ポイントになりえます。
その場合、出資金であるということを担当者に理解してもらわなければなりません。
出資金は通帳に入っていなければならないという訳ではなく、例えば出資の約束をメールでしていたり、出資契約書を交わしている等の根拠があるとプラスになるケースがあります。
しかし、自己資金を貯めてきた場合の評価から比べると出資での自己資金換算はポイントが落ちます。
10万円の自己資金で500万円の出資を受けてスタートする事業などでは、準備不足という評価により出資金を自己資金とみなしてもらえないケースもあります。

協力金・支援金・贈与

出資に近い形態として家族からの協力金や支援金などの贈与も出資と同様に自己資金と認められます。
ただし、お父さんの口座からご自身の口座に振り込まれているというのがしっかりと根拠建てて示せるか、贈与契約書等の一筆を書いてもらうなどして、資金の出処の根拠説明が必要となることがあります。
ご自身の通帳で家族からの入金が確認できることはもちろん、家族の通帳の提出を求められることもあります。
こちらも、出仕と同様に自己資金に比べて協力金の割合が多い場合は、準備不足と評価されてしまいます。

タンス預金

通帳に貯蓄をしておらず現金で所有している、いわゆる「タンス預金」の場合はどうでしょう?
結論から言うとタンス預金は自己資金と認められません。
理由は「根拠の示しようがない」からです。
いくら給料から差し引いて貯めてきたと主張したところで、通帳のように根拠を示すことができず、
金融機関の担当者も他から借りてきたのか自分自身で貯めてきたのかの判断が出来ないためです。

車や時計などの動産

車や時計などの動産は、いくら「時価価値◯百万円!」と言ってみても自己資金とは見てくれません。ただし、株の利益確定や車の売却などにより現金化出来ている場合は自己資金として認められます。
上場株や解約返戻金などで、すぐに現金化できるものについては、自己資金または自己資金に準じる資産としてプラス評価となります。

みなし自己資金

みなし自己資金とは、創業に必要な物件の取得や設備の購入など必要経費を既に出費している場合、その領収書は支払いの記録を持って自己資金とみなしてもらう考え方です。
ただし、資格を取るために予備校に通った経費などはみなし自己資金とは認められないなど、判断が微妙な部分もあります。

自己資金要件がない融資制度とは?

このように自己資金は創業融資の審査上、大変重要な項目です。
しかし自己資金が申込の必要条件とされているのは、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」や「保証協会の融資制度」などです。
その他、下記のように自己資金要件がない融資制度があります。また、一定の条件を満たすと自己資金要件がなくなるケースもあります

経営力強化資金

日本政策金融公庫に「経営力強化資金」という融資制度があります。経営力強化資金には自己資金要件がありません。
経営力強化資金は要件に合致すれば創業年に関わらず利用できる大変優遇された制度です。
自己資金要件は制度上ないとは言え、審査上の重要な審査項目であることに変わりはありませんので、自己資金が潤沢にあったほうが審査を進めやすいと言えます。

経営力強化資金の詳細はこちらの記事を参考にして下さい。

女性・若者・シニア創業サポート事業

東京都だけ限定の融資制度で、預託金を信用金庫・信用組合に預けることで運用している「女性・若者・シニア創業サポート事業」という融資制度があります。
こちらも融資を申し込みするに当たっての自己資金の要件はありません。

一定の経験における自己資金要件の緩和

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の自己資金の要件は、一定の条件を満たせば自己資金を満たしているものとみなされます。
幾つかの条件がありますが代表的な条件を一つご紹介します。

現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方
(1) 現在の企業に継続して6年以上お勤めの方
(2) 現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
新創業融資制度の「雇用創出等の要件」、「自己資金要件を満たすものとする要件」|日本政策金融公庫

このように業歴によって自己資金を満たしていると判断してもらうことが可能です。
(※その他の条件については割愛します。上記の日本政策金融公庫のページをご確認下さい。)

創業1年を超えて確定申告をしている場合

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」では創業から1年が立っている場合にも自己資金要件はなくなります。代わりに決算書または確定申告書の提出が求められます。
創業から2年が経過してしまうと「新創業融資制度」は利用できません。代わりに「セーフティネット保証」「普通貸付」や「マル経融資」を使うことになります。融資制度の詳細な説明は割愛しますが、 これらの制度も決算書が必須書類となり、自己資金要件はありません。

自己資金要件がないことが良いこととは言い切れない?

さて、果たして自己資金要件がなくなるということは、融資のハードルが下がる、ということになるのでしょうか?

自己資金は貯めてあればそれだけで評価に繋がりますが、決算書が重要視されることになると事業の成績が評価に直結してきます。
特に事業一年目で黒字化できる事業はほんの一握りの事業だけです。
創業期は早めに融資を受けておくという判断は、自己資金要件の面からも考えることができますね。

保証協会を使った自治体の制度融資においてはほどんどの自治体では1年間が利用期限となっておりますので、規定された創業の期間を超えてしまうと創業以外の制度を利用することになるため、自己資金要件はなくなる代わりに決算書が審査の主な対象になります。

「見せ金」は有効か?

事実、融資審査は自己資金が多ければ多いに越したことはありません。
これは紛れもない事実です。
しかし「残高があればなんでも良い」ということではありません。

いわゆる「見せ金」と言われる、消費者金融から借りてきたお金や友人、知人、家族に融資審査のためだけに一時的に借りた資金は自己資金には当然含まれません。

銀行は審査を行う際、非常に厳しく審査をします。
創業者も考えることはみな一緒、なのかどうかは分かりませんが、そうしたケースを何百何千と見ている担当者は見せ金を見抜くプロフェッショナルです。

見せ金は通用しないと考えた方がよいでしょう。

金融機関の通帳の見方

では、金融機関はどのように自己資金を審査しているのでしょうか?
金融機関が特に重視するのはその残高が溜まってきた経緯であり、残高ではありません。
創業者が創業のために以下にコツコツと準備をしてきたか、ということです。
従って、自己資金と主張している金額が通帳上で突然ポンと振り込まれている場合には当然いぶかしがられ、その経緯説明が求められます。

「コツコツ」の定義とは

では「コツコツ貯めてきた経緯」というのは具体的にいつからいつまでを指すのでしょうか?
実はここには明確な要件定義はなく、審査基準は個別具体的です。
しかし一般的には「半年以上」が一つの基準となっています。
半年以上コツコツと貯めてきた経緯が通帳で見て取れて、かつその資金の出処が給与や売り上げなど、正当な根據を示すことができれば自己資金として認められる可能性は高まります。

まとめ

このように制度上、自己資金要件がない場合であっても 自己資金は創業期は銀行審査において非常に重要な要素です。通帳の残高を見ているわけではなく「どのように溜まってきたのか」を見ています。
事業計画書はもちろん大切です。ただある意味では実績とは違い、やってみないと分からない部分も多くあります。失敗の可能性ばかりを考えていては銀行も融資はできません。
なぜ金融機関が創業者の自己資金を審査するかといえば、それはつまり自己資金に創業の熱意や計画性が表れているからなのです。
昨今、自己資金要件が緩和されてきているとはいえ、実際の審査では依然としてかなりのウェイトをしてており、自己資金要件がない制度でも通帳を求められることもあります。
融資を検討している方でもしタンス預金をしている方がいらっしゃれば、すぐに通帳に預金をしてくださいね。

投稿者プロフィール

武田 信幸
武田 信幸
1981年生まれ。千葉県出身。
スタートアップ期の銀行融資や補助金等、資金調達の専門家。
行政書士の傍らインストロックバンド「LITE」のギタリストとしても活動している。行政書士業と共に年2,3回の海外ツアーをこなす「行政書士×ミュージシャン」のパラレルワーカー。